.

ホーム > 法愛 7月号 > 法話

法話

自分の考えをあやつる 3 自分をあやつる第3歩

先月は、自分をあやつる方法の、第1歩と第2歩についてお話し致しました。
第1歩は、少し立ち止まって自分を見つめてみる、
第2歩は、相手のことを考えてみるでした。
続きです。

自分が変わる

自分をあやつる第3歩は、「自分が変わる」ということです。
人は相手を自分の思うように変えたい、と思うのが普通です。

ある程度まではできることもありますが、
なかなか相手を思うように変えることは難しいものです。

自然の生き物は、自分を守るために、さまざまな工夫をしています。
カメレオンは自分の身体の色を自由に変えることができます。
茶色の木に休めば、身体は茶色になります。
緑の葉に移れば、身体は緑色になります。
これは自分を変えて、相手の色とひとつになり、
自分を守るとともに、餌を捕(と)らえる工夫をしているわけです。

身近な生き物でいえば、カエルもそうです。
普通カエルは緑色をしていると思いますが、
なんと身体の色をいくつも変えて、自分を守っています。
白い石の上でじっとしていると、緑が白色に変わっていきます。
自分を守っているばかりでなく、餌になる虫に気づかれないようにもしています。

自分が変わることで、自分を守り、また餌を捕(つか)まえるという、
生きていく知恵を持っています。自然の姿から学ぶ、ひとつの大切な生き方です。

人も同じで、相手のことを考えて、
その考えに自分の考えを合わせてみようと思えば、
そこに人間関係の摩擦がなくなってきます。

そうではなくて、相手を変えることばかり熱心でいると、
そこに必ず不和が起こってきます。

なぜならば、自分が相手を変えたいと思っているように、
相手も同じように「あなたこそ、私の思うように変わってほしい」と、
考えているからです。
そこに衝突が起こって、笑顔が消えていくのです。

自分が変れば、周りも変わる

『学年のビリギャルが 1年で偏差値を40上げて 慶応大学に現役合格した話』
という本が出ました。ビリギャルを教えた坪田信樹さんが書いたものです。

この本は、ずいぶん話題になりベストセラーになりました。
高校2年で、当時の学力が偏差値30。
そんな子が、現役で慶応大学へいくというのですから、驚きです。

たとえば、聖徳太子を「せいとくたこ」と読んで、
(注、ビリギャルの彼女は、太子を太い子で、子がついているから女の子だと思った)
「この女の子かわいそうな子、この子きっと超デブだから、こんな名前つけられたんだよ」というくらいの学力だったそうです。
それが1年で学力を上げ、慶応大学へ現役で合格したわけです。

その後、彼女のお母さんである通称「ああちゃん」と、
大学を現役合格した娘さんの元ビリギャルである「さやか」さんの共著で
『ダメ親と呼ばれても 学年ビリの3人の子を信じて どん底家族を再生させた母の話』
(KADOKAWA出版)という本が出ました。

350ページほどある厚い本なので、中身は多岐にわたっているのですが、
その中で目に留まった一文があったのです。

自分が変われば、周りも変わる。
イヤなヤツだって、変わる。
どうしてこんなかんたんなことが、今まで、わからなかったんだろう。

これはさやかさんの言葉ですが、お母さんも、自分が変わっていきます。
特に旦那さんとは仲が悪く離婚まで考えたというほどでした。

感謝が自分を変えていく

そんな旦那さんとの違いを細かに分析している部分があります。
夫とは物のとらえ方、考え方、子育ての感性がまったく違うというのです。
これほど違っていれば夫婦として毎日暮らすことは困難でしょう。
その違いを20ほど挙げています。身近なことを挙げれば、

私は猫舌(ねこじた)なので熱いものが苦手に対して、
夫は、店でぬるい食べ物が出てくると、怒って責任者を呼んで文句をいうタイプです。

私が少しの明かりもつけないで眠りたいのに対し、夫はテレビも電気もつけて眠りたいそうです。

私が一番感動した映画は、夫が一番つまらなかったものです。

私が、予定表もない旅が好きなのに対して、
夫は綿密なスケジュールが崩(くづ)れることに耐(た)えられません。

4つほど挙げてみましたが、よくある夫婦の違いです。
そんなお母さんである、ああちゃんが変わりました。
そこの文章を載せてみます。

「夫は、本当は気前よく、人の幸せを自分の幸せと思える、無償の愛の人なのだ」
そう心に念じました。

そして、暖かい布団に寝られること。
嵐が来ても、雪が降っても、ちゃんと守ってくれる家があること。
姉妹の送り迎えのために車は自由に乗せてもらえること。
蛇口(じゃぐち)をひねれば、すぐ水が出ること。
お風呂だって毎日入れること。これらを考えてみました。

もし夫がいなければ、それすら、子どもたちにあたえられないのです。
当然のように、夫がしてくれていることに、感謝できるようになりました。

こう書いています。
以前は離婚を考えるほど、仲たがいしていた夫婦でしたが、
今は互いを尊重しながら、仲の良い夫婦となり、
幸せな日々を送っているとのことです。

お母さんであるああちゃんは、よく自分の考えをあやつり、
自分が変わって、相手を尊重してあげる自分になりました。

自分の考えは正しいのだろうかと、少し立ち止まって自分を省み、
じゃあ相手はどう思っているのかを考え、
そこに感謝を深めながら自分が変わっていく。

そうすると不思議に、相手も良い方向へと変わっていくのです。

自分本位の考えを捨て、心を柔らかにする

自分が変わるためには、自分本位な考えを捨てなくてはなりません。
でも、人は自分本位になりがちなのです。
それは自分を守りたいという思いからきています。

自分を守るというのは大切なことですが、
人を傷つけてまで、自分を守り幸せになるというのは、
ひと時は、得られる幸せでしょうが、長続きはせず、
やがて不幸の重荷を背負うことになります。

心を柔らかくして、自分本位の思いを捨て、
やさしさ色に自分を染めてみるのです。

こんなハガキをいただきました。

平成22年7月8日付けのものです。

七月号の『法愛』を拝受いたしました。ありがとうございました。
こんな美しい上品な郵便物を手にしたのははじめてです。
暫く眺め入りました。「包みは体を表す!」と。

七月号を早速拝読しました。
夫の老々介護十年間のもろもろの「毒ヘビ」が姿を消し、
絵手紙で蛙を描きたくなり、その後ピアノの蓋(ふた)をあけました。
十年ぶりです。不思議です。

六月号の「雨」が頭にあったのかもしれません。
おかげさまで、心が「やさしさ色」に動き始めました。

この絵手紙の文を読んで、
当時の六月の「雨」がでてくる文章は何だろうと調べてみました。
それは表紙に書いた詩だと思います。

このやさしさ色というのは、私のオリジナルな言葉です。
もう数十年も前に、心の中から出て来た言葉です。
その詩を、ここに載せてみます。

幸せが見える

心を穏やかにして
やさしさ色に
心を染める

すると
あじさいがやさしさ色に見える
つゆくさもほほえみ色に見える

雨の日は
柔らかな思いになり
晴れの日は
元気があふれてくる
生きていることが嬉しく
何もかもが輝いて
ほほえみが
こぼれおちる

やさしさ色に
心を染めると
いっぱい
いっぱい
幸せが見えてくる

こんな詩でした。この詩を読んで、
毒ヘビが姿を消し、絵を描き、ピアノに向かい、
自分が「やさしさ色」に動き出したと書いています。
自分が変わっていくところが、よくわかります。

介護の苦労からくる、自分本位という毒ヘビが姿を消したのは、
やさしい言葉にふれたからです。

ふれて心が柔らかくなり、自分が変わっていくことができました。
柔らかな思いが、相手を受け入れ、自分本位な思いも消していくのです。

自分の考えをあやつる 5 自分の考えをあやつる方法を学ぶ

教えに従って自分を指揮する

自分をあやつるのは自分自身です。

第1回目の話で、指揮者の話をいたしました。
指揮者はタクトを振って、たとえばオーケストラを上手にあやつって、
ひとつの音楽を完成させます。

その音楽を演奏する元となるものは楽譜です。
楽譜を読み、指揮者はバイオリンが主になれば、それを活かした指揮をし、
トランペットが主になれば、そこを大切に演奏するように指揮をします。

曲の音が大きくなったり、小さくなったり、
表現の仕方を工夫しながら、全体の曲をまとめあげていきます。

同じように、自分が指揮者となって、自分をあやつっていきます。
その楽譜は、「正しく生きる教え」あるいは「正しく生きていくための考え方」
といっていいでしょう。

その教えという楽譜に合わせて、自分を上手にあやつっていきます。
コントロールしていくわけです。

教えにはさまざまなものがあって、
その都度ていねいに学んでいく必要があります。

たとえば、感謝や忍耐、やさしさや助け合い。
みな正しい教えの一部です。その教えを次のように使って指揮をします。

あなたに多くを支えられているから、ここは感謝の思いを強く出していこう。
ここは忍耐が必要なところだから、上手くタクトを振って、耐え忍んでいくのがよいだろう。

ここはやさしい言葉を使った方がいい。努力してやさしい言葉を使ってみよう。
相手が困っているようだ。ここは助け合うことが必要だから、自分のことは少し横におき、
相手の幸せのために働いてみよう。

こんなふうに、自分をあやつっていくのです。

くよくよしないで明るく生きる

このように自分を上手にやつっていくと、まわりの人も変わっていきます。

最後にひとつの投書を読んで、自分がよい方向へと変わっていくと、
周りの人も良いほうへと変わっていくことを学んでみましょう。

44才になる女性の方の投書です。
「ハミングで家族を明るく」という題です。

「ハミングで家族を明るく」

歌が好きで、毎日、台所に立ちながら好きな歌を口ずさんでいる。
そうすることで、苦手な家事もよくはかどるのだ。

ところが、最近、家族の心配事や気持ちが落ち込む出来事が続いた。
ある晩、自分が歌っていないことに気づき、久しぶりに台所でハミングをしてみた。

すると、息子も私に合わせて歌い始め、
夫も好きな歌手のCDを聴いてくつろぎ始めた。

どうやら、私が歌っていると
「ママは今日は機嫌がいい」と息子や夫が安心するようだ。

気持ちが沈む日もあるが、時間はどんどん流れていく。
くよくよしないで、いつも家の中で歌っていれば、
家族みんな心穏やかにいられるのかなあと、改めて思った。

(読売新聞 平成22年7月14日)

こんな投書です。いつものようにハミングすると、
家庭が明るくなり、家族のみんなも心穏やかになったのです。

どうぞ、自分はもちろん、相手も幸せになっていけるように、
自分を上手にあやつっていきましょう。

心を柔らかに、感謝の思い深く、正しい教えを楽譜とし、
自分が自分をあやつっていくのです。

そして上手にタクトを振り、
自分という美しく調和した曲を奏(かな)でていきましょう。

(つづく)


訪問者数:    本日: 昨日: