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法華経の詩

法華経の詩(36)

信解品 第四(2)

世尊なる仏に
仏弟子たちは比喩を持って心境を語った
この比喩は後世
「長者窮子(ちょうじゃぐうじ)の譬喩(ひゆ)」
として 語り継がれていく

仏よ ある男が子どもの時に
父とはぐれて他国に行ったとします
彼はそこで 十年 二十年
あるいは五十年という長い間
住んでいたとします

その男は大人になったのですが
とても貧乏で 
どこかに仕事がないかと探し求めて
彷徨(さまよ)っていました

父は 小さいころはぐてれしまった子を
探し求めていたのですが
なかなか見つかりません

父の家は大いに富んでいて 財宝が満ちあふれ
大勢の使用人や
像や馬・牛・羊が幾頭もいました

諸大国の中でも 有数な長者で
農業や商業を手広く営み
財産を蓄積していたばかりでなく
その財産を使って
広く困った者たちに 施し与え 助け
尊敬と信頼の念を得ていました

父は五十年の間
自分の息子が 行方不明であることを
誰にも打ち明けず
自分一人で悩み苦しみ こう嘆いていたのです

自分は年を取ってしまったが
莫大な財産がある
一人の子もいなければこの財産は散逸してしまう
この財産を受け継ぐ息子が見つかったならば
どんなに有難いことか と