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しきたり雑考(59)

蜂と口笛

今月は「蜂と口笛」ということで考えていきます。
{『しぐさの民俗学』ミネルヴァ書房 常光徹著参考}

蜂と口笛にはどんな関係があるのでしょう。

私も何回か蜂に刺されたことがあります。
墓地で掃除をしていて、青木にむらがっている雑草のような蔓を
箒で取り除いているとき、その青木の中にキイロスズメバチの巣があったのです。
そこから蜂が飛び出し、頭を刺されました。

必死の思いで逃げたので、いっぴきの蜂ですみましたが、
ずいぶん痛い思いをしました。

その時は、刺されたところが少しふくれただけでした。
私の父は蜂に弱く、刺されると顔も変わってしまうほどむくみ、
手や足までもむくんでしまって、近くのお医者さんに注射を打ってもらうほどでした。

昔から「口笛を吹いて蜂を退散させる」という言い伝えがあります。
あるいは「口笛を吹いたら蜂に刺されない」とか、
「蜂は口笛を吹くと逃げる」「口笛を吹くと蜂がよってこない」などがあります。

ある文献(14世紀ごろ)には、こんなことが描かれているといいます。

奈良の東大寺に巣くった大蜂の群れに、襲われて逃げまどう人々の中に、
両手を空にあげて顔をあおむけ、口をとがらして逃げる少年の姿を描き出していて、
大蜂が老若男女をかまわず襲っているのに、
口をとがらして口笛を吹いている少年のそばに描かれている二匹の蜂は、
少年からに逃げ去ろうと描かれています。

「口笛を吹くと蜂が逃げる」ということを表していると、
『しぐさの民族学』の著者は書いています。

吹きならす口笛の音に、なにやら不思議な力が宿っているとも考えられますが、
蜂にむかって息を吹きかけるしぐさに意味があるようです。

蜂は天候については敏感なようで、
大風を避けるという俗信が各地にあります。
口笛を吹くのは、蜂の嫌いな風を呼び起こす手段であると推測されるわけです。
蜂が出てきたとき、このことを試さない方がよいとは思いますが…。

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