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しきたり雑考(53)

さまざまな迷信(俗信)3

今月は9月に続き、「さまざまな迷信(俗信)3」ということで考えていきます。
『なぜ夜に爪を切ってはいけないのか』角川新書 北山哲著参考

一つ目は「千羽鶴が願いをかなえる」です。

私も病気になり18日間入院をしたことがあります。
そのとき娘が千羽鶴を折ってくれました。
今でも事務室に飾ってありますが、娘の願いがきいてか、
ひどいことにならずにすみました。

この千羽鶴は紙でおりますが、昔(平安時代のころ)は、
この紙が貴重なもので、汚れを祓う力があると信じてられていたようです。
貴重な紙ですから、その紙を使った折り紙は、
宗教的なものとして扱われてきました。

また「鶴は千年、亀は万年」という言葉があるように、
この「千」には長寿の意味があり、また多くの数を表し
「めでたい」ものとして力がると信じていたのです。
さらには美しい姿をした鶴は、よいことが起きる鳥として
「瑞鳥」(ずいちょう)と呼ばれていました。

人の思いは物に宿ると言われています。
病の人が完治するようにと願いを込めた、
一つひとつの鶴の折り紙には、
その鶴を折った人の尊い願いが込められ、
その思いが邪を祓い吉兆をもたらすと考えられます。

二つ目は「家の中で傘をさすと運が開けない」です。

この俗信も小さいころ聞いたことがあります。
傘は普通、雨の日にさします。
このごろは夏の暑い日には男性でも日傘をさすという、
そんな意見もでてきました。

晋山式(しんざんしき)といって、
お寺に新しく住職として入るための儀式があります。
そのときに、お稚児さんなどを伴って、行列をします。
新しい住職には大傘をさします。

どうもこの傘は、身分の高い人、
あるいは尊い人にさしかけるもののようです。
昔からそうであったようで、
身分の高い人が家来にさしてもらって歩く高級品であったようです。

時代劇でも武士が浪人の身になり、食べていけないので、
内職で傘を作っているそんなシーンを見たことがあります。
草鞋(わらじ)をあんでもいいのですが、
プライドのある武士が人に踏まれるようなものよりも、
人の頭の上にさす傘を作ったほうが、武士としての面目を保つのによかったのです。

さらには、傘は高級品であったために、
元禄時代では、一本の傘が、お米一升の値打ちがあって高く売れたそうです。
そんな大切な傘をむやみに家の中で開くようでは出世もできないし、運も開けない。
そんなところから、この俗信が来ているようです。
みんな深い意味があるのですね。

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