しきたり雑考(50)
女性にまつわる迷信(俗信)
今月は「女性にまつわる迷信(俗信)」についてお話し致します。
一つ目は「一つ年上の女房は、金の草鞋(わらじ)を履いて探せ」というものです。
ここの金は「きん」と読むのでなく、「かね」と読むのだそうです。
この金(かね)の意味はお金や金貨の金(きん)でなく、鉄の意味があって、
そこに草鞋を当てはめて、「鉄製の草鞋」となります。
ワラであんだ草鞋はすぐ切れてしまいます。
今の修行僧堂ではビニールでできた草鞋を使っているようで、
ワラよりも丈夫にできています。そのビニールより強いのが鉄製でできた草鞋です。
それほど丈夫な草鞋で、我慢強く歩き回り、
一つ年上の女性を探せという意味で、この金(かね)という字を使っているようです。
江戸時代では、今と違い多くの女性は、十代で結婚したようです。
その若さでは、主婦として家の役割を賄(まかな)っていくのは大変なようで、
夫が安心して家長としていられるのは、
一つくらい年上の女性のほうがよいと言われてきたのです。
そんなところから、この迷信(俗信)が出て来たようです。
次に「桃の虫を食べると、美人が生まれる」という迷信(俗信)です。
まともに、この言葉を受け取れば、
桃についた虫など、食べられるはずはありません。
ここでは、桃についた虫まで食べてしまうほど、
桃を食べるとよいのだという意味です。
日本昔話で「桃太郎」の話は有名です。
桃から生まれた子が鬼を退治に出かけます。
子どもが生まれたのはリンゴでもナシでもありまあせん。桃です。
この桃には霊力のある果物と信じられていました。
中国でも、この桃が悪い気を払う霊木で、魔除けになると信じられていました。
ここの美人は、美しい人ですが、元気な健康な子が生まれるとも解釈できます。
もう一つ「四つ違いの夫婦は苦労する」という迷信(俗信)もあります。
四つ違いを忌み嫌ったようで、
病院でも四番のついた部屋は嫌われていて使っていません。
この起源は「四厄重惑」(しやくじゅうわく)
という言葉が「四悪十悪」として庶民に広まり、
年齢差が四つと十才違うとよくないと信じられていたようです。
しかしですね、縁を結ぶ基本は、互いを思いやる慈しみの心だと思います。