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しきたり雑考(44)

お賽銭

今月は「お賽銭」についてお話し致します。

年の瀬に神社にお参りし、お賽銭を投げます。
また正月になれば、初詣をし、
やはり、神社にある賽銭箱にお金を投げ入れます。
「チャリン、ガラガラ」という音がしますね。

このように、神様の前でお金を投げ入れるのは
失礼ではないかという人もいます。

習慣でそんなものだと思っていたのですが、
言われれば、そうかもしれないと思ってしまいます。

よくきれいな池や噴水の中にも、
10円玉や100円玉が投げ入れられています。
鎌倉に銭洗い弁天があるそうですが、そこでお金を洗うと、
2倍になって返ってくるとも、どんどんお金が入ってくるとも言われているようです。

今はあまり見かけませんが、厄年になると、村の神社にお参りして、
42才の厄年なら、100円硬貨や500円硬貨を、
その年の数だけ撒くという風習があったようです。
お金を撒くことで、厄を落とすのです。

その考えをもう少し深く察していくと、
お金を撒く、あるいは投げることで、災いが取れるということが考えられます。

友人の和尚さんが、悩み迷う女性の相談を受けて、
「とにかく10円でも100円でもいいから、
毎日、仏様あるいは神様にお賽銭を投げ入れると悩みがとれますよ」
と助言をしたそうです。

その女性はそのことを実行し、
日に日に悩みが取れて、元気を取り戻したといいます。

お賽銭には、人の災いや心にくっついた汚れを落とす力があるのです。
また、財を捨てることで、自分の内にある貪欲が取れていくわけです。

神社は神聖な場ですが、そこにお賽銭を投げ入れることによって、
自らが犯した日頃の罪や穢れを洗い落してくれる力があるようです。

イザナギの命が黄泉の国から帰ってきて、
水で身を洗い清めるみそぎ祓いをしたことが『古事記』に書かれています。
それと同じように、お賽銭を投げ入れることで、
お金に自らの汚れがくっついて、神様がその汚れを祓ってくれると考えられます。

お賽銭を投げ入れる時には
「どうぞ日頃の私の罪汚れ、そして災いをお取りください。
いつも心清らかに過ごせますように・・・」
と念じ、お参りすることが大切ではないかと思います。
その思いは、必ず神仏に通いていくでしょう。

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