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しきたり雑考(38)

道祖神

今月は「「道祖神」(どうそじん・どうそしん)」についてお話し致します。

村の境などに仲良く肩を寄せ合っている石の像を見て、
何のためにあるのだろうと思っていました。
特に、長野県の安曇野市に行くと、
男女が彫られている石の像をよく見かけるのです。

村の境や峠などに安置してあるこれらの石像を道祖神というのです。

この神は塞(さえ)の神と言われているようで、
この「さえ」は「さえぎる」の意味があって、
悪霊や疫病が村に入ってこないように、
その集落を守っている神だと言われているのです。

安曇野市は日本の市町村で一番、道祖神が多いといわれていて、
約400体以上もあり、散策もできるようです。

その道祖神の形は「二体相愛像」、あるいは「男女双対像」と、
文字型の道祖神に、大きく二つに分けられるようです。

この男女双対の道祖神は、夫婦和合の神様であるとも言われていますが、
この石像には、次のような不思議ないわれがあるようです。

昔あるところに、とても美しい兄と妹がいて、
二人は年ごろになって、それぞれ結婚相手をさがそうと旅にでました。
兄はよき伴侶を求めて探し歩き、ずいぶんと時が過ぎました。

そんなある日、とても美しい女性に巡りあい、二人は結ばれて夫婦になったのです。
兄はこの美しい妻を連れて故郷に帰ることにしました。

兄が自分の村に着くころ、妻は怪訝(けげん)な顔をして、尋ねました。
「まさか、あなたは私のお兄さんではないですか」と。

実は何年か前に、それぞれの相手を探しにでた、兄と妹だったのです。

仲のよい夫婦としての神様であったのですが、
それが兄と妹であったというのです。
そんなことが伝承の中に残されています。(新谷尚紀説)

この道祖神は、子どもを守る役割もあって、
道祖神をお参りする儀式の多くは子ども達が中心に行われているようです。

そのひとつに「どんど焼き」があります。
一般には1月14日の夜か15日の朝行われていて、
ワラ人形の道祖神と注連飾(しめかざ)りなどを持ち寄って火を焚きます。
その火で焼いた餅を食べると、この1年、子ども達が無病息災でいられるとか、
その灰を持ち帰って家の周りにまくと病気にならないとか、
書初めの書を燃やし、火が高く燃え上がると字が上達するとも信じられています。

神様を思う昔の人びとの暮らしが尊く思われます。

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