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しきたり雑考(34)

産育(さんいく)と葬送の似通った関係

今月は「産育と葬送の似通った関係」についてお話し致します。
(古家信平説)

人が生まれてくるときのさまざまな儀式と、
人が亡くなり、あの世へ送るさまざまな儀式には、
大変似たところがあります。
そんな関係を今月は考えてみたいと思います。

Z まず、人が生まれると、すぐご飯を炊いて
産飯(うぶめし)を神棚に供える風習があります。
一方、人が亡くなるとすぐにご飯を炊いて、
亡き方に、枕飯(まくらめし)を供えます。

産後、しばらくして産祝(うぶいわ)いをします。
出産を祝うために、みんなで会食をします。
人が亡くなると食い別れといって、共に食事をし、
故人とのお別れをします。
通夜などで、近しい人と会食をするのは、食い別れの意味があるわけです。

さらに、生まれて七日立つと、
お七夜といって、無事成長してもらう意味と、命名をし、
祝いの食事をします。
亡くなった人は初七日といって、
無事あの世に帰れるようにと、亡き方をご供養します。

生まれて30日過ぎたころに、お宮参り(お寺参りも可能)をし、
神様に子が無事育っていくようにとお願いします。
一方、亡き方のほうは、四十九日忌の法要をし、
浄土に無事帰っていただくようにと、ご供養します。

100日目の食い初めや、100か日の法要も重なるものがあります。

一生困らないようにと、また生まれて1年目の初めての誕生祝いに、
一升のお餅(もち)を背負わせたり、
亡き人は一周忌の法要を営み、
あちらの世界で無事に暮らしていただいているかを確認しながら、
感謝の法要を致します。

子どもの夜泣きは、前世とのつながりを意味しているとも言われていて、
誕生と死の後に行われるさまざまな儀式が、とても似通っていることが分かります。

これだけ似通っているのは、どういう意味があるのでしょう。

この世に授かった子の魂は、まだこの世に落ち着かないし、
昔は、もしかしたら生後間もない子はもののけが来て
子の魂を奪っていくとも信じられていました。

ですから、この世に子の魂をしっかり落ち着かせるため、
子どもが生まれたとき、さまざまな儀式を行うわけです。
逆に亡くなっていく人は、この世から引き離し、
あの世で祖霊として落ち着かせるために、三十三年忌まで、
ねんごろにご供養するわけです。

この世とあの世の関係が深く関わっているわけです。

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