ホーム > 法愛 4月号 > しきたり雑考

しきたり雑考(19)

幸運を招く生き物

今月は「幸運を招く生き物」というお話を致します。

昔からヤモリは家を守るとか、朝のクモを殺すなとか、
蜂の巣を家の玄関に飾るとよいとか、さまざまなことが言われてきました。

ヤモリはイモリと違って爬虫類で、イモリはカエルと同じ両生類です。
昔、井戸のあった家は、イモリが井戸の中の害虫を食べてくれるので、
「井戸を守るもの」と言われていました。
ヤモリは「屋守り」で、言霊(ことだま)の力を借りて、
家を守る生き物として大事にされてきました。

特にヤモリは白い色をしています。白は神聖なものと考えられ、
蛇でも白い蛇が「神様からの使い」と考えられていたほどですから、
白いイモリは、家を守る力があると信じてきたわけです。

反対に黒い色をしたカラスが泣き叫ぶと、何か不幸の兆しと思われてきました。

クモはどうでしょう。
朝のクモは良くて夜のクモは良くないという信仰みたいなものがあれば、
逆の地域もあるようです。

鹿児島ではこのクモのことを「こぶ」というのだそうで、
「夜にこぶ」で、それが変化して「よろこぶ」となり大切にしてきました。

関西では朝のクモは「足が多い」で、
それが「おあしが多い」にかわり、さらにそれが「お金が多い」に変化し、
商売人は朝のクモ見つけたら懐(ふところ)に入れておけというほど、
珍重したのです。

蜂の巣ですが、よく蜂の巣は縁起が良いと言われて、
蜂の巣を飾っている家がたくさんあります。

蜂は女王蜂をトップに一族を増やし、非常に大きな巣を作ります。
また栄養価の高い蜜(みつ)を供給してくれます。
それらが重なって、繁栄という思いと生命力の象徴として考えられ、
家に飾ると幸運を招くとされてきたのです。

また蜂が刺す力が邪を祓う力として、
厄除けや呪い除けに使われてきたとも思われます。
そういえば、オオスズメバチの強さには威厳さえ感じますね。

他に生き物では、ツバメが家の軒先に巣を作ると縁起が良いとか、
何度も脱皮を繰り返して生命力のある青大将というヘビが家に現われると
縁起がよいともいいます。

昔の人はそうして生き物を大切にしながら共存し、暮らしてきたとえいます。

バックナンバーを読む このページの先頭へ戻る