しきたり雑考(18)
神楽
今月は「神楽」(かぐら)についてお話しいたします。
秋は多くの地域で祭りが行われます。
その祭りにつきものは神楽です。
「御神楽」ともいう地域もあります。
神楽は神社の祭礼で神にささげる歌舞(かぶ)をいいます。
神楽の語源は「神霊が降臨する場所」である
神座(かみくら)からきていると言われています。
神座に神霊が降りてきて、人間の幸福のために歌舞を演じるわけです。
本来は、神霊が物や人に降臨し、
人の身体を借りて人前で歌ったり踊ったりするわけです。
これは神霊の力を借りて、
衰えかけた生命のエネルギーを復活、再生させ、健康長寿に導くためであったり、
清めや魔を祓う力をいただいて幸せを培うためのものであったりします。
なかには手に物を持って踊ることもあります。
この手に持つものを「彩物」(とりもの)といいます。
榊(さかき)や幣(みてぐら)、笹や鈴、扇、弓、矢などあります。
この彩物は神霊が降臨して宿る、依代の意味があります。
その彩物に神霊が降臨し、踊り手を神がかりし、
お参りする人々の邪を祓い長寿に導くのです。
巫女が舞う神楽を巫女神楽といいますが、巫女は彩物として榊や鈴、扇を持ち、
その彩物と、汚れのない巫女に神が降臨しやすいところから、
清めの舞いを舞ったと言われています。
現在でも、お祭りで巫女が神楽を舞う地区はたくさんあります。
「ああ、巫女に神が降臨し、この地域を清め、
生命のエネルギーの再生をしてくださっているのだなあ」
と感じることが大切かもしれません。
祭りには踊りがかかせませんが、それは神への感謝と、
踊る自らに神が降臨してくださって、邪を祓い幸せを与えてくださっているのだと感じ、
感謝の思いをささげることが神への礼節かもしれません。
今では、このような精神は失われ、
ただ踊り楽しむだけになってきつつあることを感じます。
秋祭りを通し、お祭りがただ楽しむ場でなく、
日ごろ神々に抱かれていることを感じ取っていく
「感謝の場」とすることが必要だろうと思います。