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仏事の心構え(153)

仏像の見方について 33 吉祥天

今月は「吉祥天」(きちじょうてん・きっしょうてん)についてお話し致します。

この吉祥は、サンスクリット語ではラクシュミーで、
その意味は「幸福」とか「繁盛」という意味があります。
ですから幸福や繁盛を司るのが、この吉祥天です。

吉祥天は女神で、女性の姿をしています。
仏教では鬼子母神の子どもであると言われています。

鬼子母神は五百人とも千人とも言われる子がありました。
母は羅刹(らせつ・鬼)でハリティといい、当時町の子を奪っては食べていました。

困った人びとはお釈迦様に相談します。
お釈迦様は彼女の一番下の子であるピャンカラを奪い隠してしまいました。

七日七夜、探し歩いた彼女は
何でも知っておられるというお釈迦様の所にやってきて、
ピャンカラの行方を聞きます。

お釈迦様は「たくさんの子がいるのに、一人くらいいなくなっても」と言うと、
羅刹は「かけがいのない私の子です」と言う。

「お前がさらって食べた子の親の悲しみが分かるか」
「よく分かりました。これからは二度と子どもは食べません。
これ以後、子を守るために働きます」

そう言うと、末の子を返してあげ、
それ以来、ハリティは鬼子母神と言われ、子を守る神なったという話です。

そんな親の子が吉祥天です。
また先月お話しした毘沙門天の妻であったとも言われています。

神様や仏様の世界でも、子となり母となり、また夫となりして、
やがて神仏(かみほとけ)になるのです。

日本の神道にも通じていくような成り立ちをしています。
神話の中に出てくる天照様も、機織(はたお)りをして働き、父がいて兄弟もいましたね。

この吉祥天は豪華な衣装をまとっていて、明らかに女性であると分かります。
頭には王冠をかぶり、左手には願いをかなえてくれるという宝珠(ほうじゅ)を持ち、
右は同じように願いをかなえてくれるという与願印(よがんいん)などの印を結んでいます。

穀物を豊かにする神様としての信仰もあり、
当寺にも蚕(かいこ)を守る吉祥天があります。