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仏事の心構え(106)

仏壇 5 供物の力

今月は仏壇の5回目で、「供物の力」についてお話いたします。

供え物についてですが、実際に見えない人に供えて効果があるのかないのか、
という疑問もでてきます。 ままごとではないので、それなりに力があるのです。

供物が成仏の力につながっていく場合もあることを知っていましょう。

実話を集めた『ひとり百物語』(立原透耶・メディアファクトリー)という本のなかに、
「みかん」の話がでてきます。

16才で亡くなった娘が夜、母のもとに出てきて、
枕もとにあったミカンを食べるというのです。

ミカンの皮をむく音が「めり、めりっ」と聞こえます。
枕もとにあった籠一杯のミカンを食べ尽くしてしまうほどの量を食べているのです。

ようやく母が娘の霊に向かって
「Oちゃん、もうそれくらいにしておきなさい。お腹を壊しますよ」というと、
ぴたりとミカンの皮をむく音がやんだといいます。

そして娘が静かに立ち上って、仏間に帰っていく気配を感じたといいます。

それからしみじみと
「Oちゃんはミカンが好きだったわ。
そういえば仏壇に供えていなかったね。
明日になったらお供えしよう」と思い、ミカンをお供えしました。

それ以来、ミカンを食べに出てくることはなかったという話です。

どうも供え物には意味があって、どうせ先祖様は食べられないからといって、お供えしないのは、軽率な判断かもしれません。 やはり故人が好きだった食べ物を供えてあげることが大事です。

私も法事の後、甘い和菓子が急に食べたくなったのですが、
おそらくその法事で供養した先祖様が和菓子を食べたかったからだと思います。

仏壇には、花や灯り、水やご飯、お線香を供え供養しますが、これはとても大切なことで、 また、初物もあげてあげたり、お酒が好きだった人には命日にお酒を供えたりして、 先祖様のことを大切に思ってあげることが大事なのです。