仏事の心構え(96)
法事 6 「塔婆」
今月は「法事」の6回目で、「塔婆」にいてお話し致します。
法事のときには、たいがい塔婆を立てます。この塔婆にはどんな意味があるのでしょう
民俗学的にいえば、古来から日本人が神や霊魂をまつるときの依代(よりしろと読み、霊魂がそこにが宿ること)として立てたものが仏教化して、塔婆になったといいます。
三十三回忌になると弔い上げといって最後の供養をしました。それは亡き方(死霊)が祖霊になると信じられていたからです。
そのとき、枝や葉のついた松の木などに、戒名や供養文を書いて、お墓に立てたのです。これも死者の霊魂が祖霊へと昇っていく依代としの役割を持っていたといわれています。
(『死と葬送』吉川弘文館)
仏教では塔婆は仏様の姿そのものです。たいがいの塔婆は5つほどに堀り分けられています。
その形は上から空・風・火・水・地(くう・ふう・か・すい・ち)を表しています。
これを五輪塔婆というのですが、これは宇宙全体や仏そのものの姿を意味しているのです。
ですから、塔婆そのものが仏様の姿を現していることになります。この意味で、塔婆一本立てれば仏像を一つ建立するほどの功徳があるとされています。
また有名なお寺には五重塔や三重塔が建てられていますが、建立の資金は今では庶民には建てられないほどの額にのぼりましょう。
そのような塔を各家では建てられないので、そのかわりに法事のとき五輪の塔婆を立て、功徳を積むのです。
ですから塔婆を立てるのは、家に五重塔を建てるのと同じ意味もあるわけです。
子どもがいたずらに、仏さまの絵を描いただけで、功徳があるというのですから、
家に五重塔を建てれば、その功徳は大きなものとなるでしょう。
塔婆に書く供養文は宗派によって違いますが、仏の名やお経文、そしてお参りする人の名(戒名)を書きます。この人のために塔を建立し、この人のために仏像を作ったという意味にもなり、その功徳の力で故人の成仏を願ったともいえます。