ホーム > 法愛 3月号 > 仏事の心構え

仏事の心構え(80)

六地蔵


今月は「六地蔵」(ろくじぞう)についてお話を致します。

お地蔵様の名の由来は、人びとの苦しみや悩み、願い事などをかなえてくださる慈悲の心が、大地があらゆる物を育む力を蔵(くら)のように持っているところからきているといわれています。お地蔵様は、この世での私達の救いと、またあの世での救いを使命として持っておられる仏さまでもあります。信心のない人であれば、これらのことは作り事のように思われるかもしれませんが、果してそうでしょうか。昔から数え切れない多くの人びとが信仰し、手を合わせてきた、その敬虔な気持ちと信仰の力を否定できる人はいないでしょう。

亡くなった幼い子が、あの世に行く途中、賽(さい)の河原で迷っているのを救ってくださるのがお地蔵さまであるという話は有名です。

また昔話にもなっている六地蔵も有名な仏さまです。先月「六道」というお話をいたしました(6月号参照)。私たちが亡くなると、「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人間」「天上」に生まれ、その六つの世界にいて、迷える人びとを救ってくださるのがお地蔵さまです。そのお地蔵様の持物によって、どの世界にいらっしゃる方かを見分けることができます。


左手 右手 地蔵
地獄 宝珠 錫杖(しゃくじょう:杖のようなもの 大定智悲地蔵
餓鬼 宝珠 与願印(よがんいん):願い事をかなえる印 大徳清浄地蔵
畜生 宝珠 如意(にょい):不思議な力を持つ短い棒 大光明地蔵
修羅 宝珠 梵篋(ぼんきょう):多羅樹(たらじゅ)の木の葉に記した経典 清浄無垢地蔵
人間 宝珠 施無畏印(せむいいん):恐れを取り除く救済の印 大清浄地蔵
天上 宝珠 経巻(きょうかん):お経を記した巻物 大堅固地蔵

ここでどのお地蔵様も持っておられる宝珠は宝の玉で、お地蔵様の悟りの力や救いの力を現す象徴です。少し専門的になりましたが、関心を持っていただければと思います。