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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(129)

イラスト・山中一正

悪魔との対話

仏陀は悪魔との対話を何度も行っている
今では後世の人が作り出したもので
仏陀を神格化させるものだと
判断するかもしれない
しかし仏陀は何度も悪魔と対話し
堕落の誘惑と心の混乱を避け悪魔を正している

正しい教えが広がり
この世が仏国土になっていくと
悪魔は住む所を失い
やがて消えていかざるを得ないから
悪魔も必死なのであろう

仏陀が苦行をやめた時に現れた悪魔は
こうして仏陀に迫ってきた

仏陀が独り静かに坐して瞑想して思った
もはや苦行から解放された
ためにならない苦行を捨てたのは善いことだ

心を落ちつけて悟りに達したのは善いことである
そう思っているところへ
髪の毛がよだつほどの恐怖を与えようと
悪魔が現れ語りかけた

人びとは苦行によって清められるのだ
その苦行を捨てて清浄に達する道を逸脱し
清くない者が清いものであると考えている
なんと愚かなことか
仏陀はそのとき
後世に残る戒(かい)・定(じょう)・慧(え)という
学びの基本を語り 悪魔を退けた

幸せに達するための苦行はすべてのためにならない
乾いた陸地に乗り上げた船のいかだのようなものだ
まったく役に立たないものだ
悟りに至る道なる戒めと精神統一と智慧を修めて
私は今 最高の清浄に達した
破壊をもたらす悪魔よ お前はいま打ち負かされた

それを聞いた悪魔は
打ちしおれ憂い沈み 消え失せた