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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(119)

イラスト・山中一正

無記と毒矢のたとえ

ある青年が仏陀に尋ねた
世界は常住ですか無常ですか
世界は有限ですか無限ですか
霊魂と肉体は同じですか異なっていますか
霊魂は死後存在するのですか存在しないのですか
霊魂は死後存在し存在もしないのですか
霊魂は死後存在しないし
また存在しないのでもないのですかと

仏陀はこの青年の悟りの段階を見て
これに答えるよりも
普段の生活を調え
正しく生きることを悟らせたいと思い
この答えに解答を与えず(これを無記という)
毒矢のたとえをしてこの青年の心を目覚めさようとした

突然あるところから毒矢が飛んできて
一人の男に当たった
そのとき毒矢はどこから飛んできて

その矢の長さ重さはどれくらいだろう
矢の羽や先端はどのような形をしているか
それを知るまで男に対して何の処置もしい
もしそうであれば男は死んでしまうだろう
そう仏陀は語って青年に自らの生き方を顧みさせた

このたとえで分かるようにウナギ論者のように
ああだこうだと論理をかき回すよりも
今の生活を正し 善く生きることが
やがて真理を見極める力を持つのだと
仏陀は教えたかったのだ

これは一つの対機説法で
死後の世界を仏陀がわからないとか
否定したわけではない
やがてあの世の存在を明確に答えられない
学者や僧侶によって
仏陀は霊魂やあの世を否定したと語らせる
まことに愚かなことである

善を積んだ者は死後  天に生まれ 悪なる生き方をしたものは死後  地獄に堕ちる ゆえに現在の生き方が問われているのだ