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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(103)

イラスト・山中一正

シンガーラカの祈り

仏陀が竹林精舎に滞在されていたとき
そこからラージャガハに
托鉢にでられたときのことである
托鉢の途中衣服と髪を洗い清め
合掌して東西南北と上下の六方(ろっぽう)を
礼拝している一人の青年がいた

その青年に仏陀は尋ねた
なぜそんなにして六方を礼拝しているのかと
青年シンガーラカは
亡くなった父の遺言によって礼拝しているのです
仏陀は答える
ただ形式的に礼拝していてもあまり意味がありません
ではどうすればよいのですかと対話が続いた

仏陀は静かに説いた
礼拝には正しい心が必要なのです
東方は父母であり 南方は師
西方は妻(夫)子 北方は朋友

上方は宗教家で下方は部下や使用人を意味しますが
正しい心で礼拝することが大切なのです

正しい心とは
四つの罪垢(ざいく)を捨て 四つの煩悩で悪事をせず
家財を失うような六つの過ちを犯さないことです

四つの罪垢を捨てるというのは
生き物を殺すことなく 盗みをせず
嘘をつかず 他人の妻に近づかないことです
四つの煩悩とは
むさぼり 怒り 愚かさ 恐れで悪をしないこと

さらに六つの過ちをしないというのは
酒におぼれない 深夜に町を遊び回らない
遊びごとばかりして仕事をしないということがない
賭博や麻薬に近寄らない 悪友と交わらない
怠って努力しないということがない

これらのことを常に心に念じ守って
いつも心を正しく保って礼拝するならば
現世でも死後にも安楽と幸せを得ることができるのです
これを聞いたシンガーラカは熱心な在家信者となった