お釈迦様の生涯
釈尊の願い(87)
火堂(かどう)の毒龍
仏陀はひとり
バラモンであるウルヴェーラ・カサッパを訪ねた
500人もの弟子をもつカサッパに会うには
まだ無名である仏陀にとって至難の業であったろう
しかしカサッパの弟子達は仏陀の姿を見て
並々ならぬすがすがしさを感じ
師匠のカサッパに
一人の沙門(しゃもん・出家者の意)が
訪ねてきたことを告げた
カサッパに出会うこのとのできた仏陀は
穏やかに一夜の宿を請うた
カサッパは念をおしながら三たび繰り返しいった
「あの火堂でよければ泊まってもよいが
そこには毒龍がいてあなたを害するかもしれない
それでもよいのか」
仏陀は
「心配することはありません
その火堂に宿をお貸ください」と請うた
その火堂に住む凶暴な毒龍は
数百年前よりそこに住み
宿を求めて火堂に泊まった修行僧は
一人としてそこを出てきたものがいなかった
カサッパは心の内で
あの若い沙門は生きては出てこられまいと思った
仏陀は火堂に入り坐禅をして心を調えた
薄暗い堂内になにやらうごめくものがいた